1993年度は、ダイズの葉の調位運動の品種間差異について検討した.ダイズ5品種(ツルコガネ、ナンブシロメ、エンレイ、タチナガハ、ミヤギシロメ)を圃場条件で栽培し、幼莢期に防雀網を群落上部に被せ調位運動を抑える処理を行い、群落内部の2個体の全小葉の受光量を簡易積算日射計で測定した.蒸散量は茎にダイナゲージを巻き、葉温は熱電対を葉裏面に張り、データロガーを経由しパーソナルコンピュータでモニター解析した. 単位土地面積当りの受光量はいずれの品種も処理間に差はなかったが、単位葉面積当りの受光量は品種間差異があり、ナンブシロメ、ツルコガネの最上層では処理区の方が受光量が大きくなった.小葉面積が小さく、葉の厚い品種ほど受光量が大きい傾向があった.調位運動を抑える処理が葉温に及ぼす影響は品種間差異が大きく、ツルコガネ、ナンブシロメ、エンレイでは処理区の葉温が大きくなった.タチナガハ、ミヤギシロメでは処理間差は小さく、特にミヤギシロメでは無処理区も気温より高くなった.蒸散速度(単位葉面積当りの茎流速度)はタチナガハがもっとも大きく、エンレイが最小であった.葉温は葉の調位運動と蒸散によって制御され、これらの要因の係わり方は品種間で異なるものと考えられた.葉温の調節は、ツルコガネとナンブシロメは主に調位運動によって、タチナガハは蒸散と調位運動の両方によって行っているが、エンレイ、ミヤギシロメは両形質とも不活発で葉温の調整があまりうまく行えないものと推測された.
|