本年度は主として、ネピアグラスの品種ルクワナにおける牛糞尿の大量施用に対する生長反応を調査した。施用糞尿の総量は、多肥区で490ton/ha、中肥区で250ton/ha、少肥区で10ton/haであった。多肥区及び中肥区の施用量は一般農家の施用量に比べて著しく多かったが材料の生長に異常は認められなかった。しかし、植付け当年の材料であること、糞尿が緩効性の肥料であること、気象が異常であったこと及び9月3日の台風13号による被害のために刈り取ったことなどにより、地上部総乾物収量は多肥区と中肥区とで大差なく、多肥区で29.1ton/ha、中肥区で27.7ton/ha、少肥区で14.0ton/haにとどまった。次年度は、越冬した植物体の再生により生産が開始されるとともに本年度に施用した糞尿の分解が進むと予想され、各区の収量及び収量の区間差は本年度よりも大きくなると期待される。本年度の場合、各区とも、固体群生長速度は葉面積指数にほぼ比例し、過繁茂の状態には至らなかった。葉面積指数の区間差は、9月の刈り取りまでは主として茎数、刈り取り後は主として1茎当りの葉面積の差によるものであった。また、9月の刈り取り時における乾物重の根/茎葉比は、多肥区で0.051、中肥区で0.072、少肥区で0.124であり、根の茎葉生産効率は多肥の区ほど大きかった。他方、乾物収量の葉身比率及び硝酸態窒素含有率の面での飼料品質は多肥によって悪化する傾向はなかった。以上のように、ネピアグラスは糞尿の大量施用に対する耐性もしくは適正を備えていると推察される。この特性の機構を、現在分析中の本年度の資料及び次年度の実験結果を加えて解析するとともに、投入された窒素その他の養分の植物体による回収率及び圃場系外への逸失率などを、環境保全の観点から調査する予定である。
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