研究概要 |
本年度は,植付け第2年目のネピアグラス品種ルクワナを供試し,厩肥施用量と刈り取り間隔の各3段階の処理を組合せた処理区を設定して,厩肥の多施と刈り取りが乾物生産性に及ぼす影響を調べた。施用厩肥の生重総量は,多肥区で240ton/ha,中肥区で120ton/ha,少肥区で0ton/haとし,この総量を6回に分施した。各施肥区に,刈り取り間隔を1ヵ月,2ヵ月及び無刈りとする刈り取り間隔区を設けた。刈り取り高さは約15cmとした。多肥区及び中肥区の厩肥施用量は一般農家の施用量に比べて著しく多かったが材料の生長に異常は認められなかった。厩肥施用量が多いほど,また,刈り取り間隔が長いほど,各刈り取り時の乾物収量は大きく,年間の総乾物収量も同様の傾向であった。多肥・無刈り区の収量は26ton/haに達し,農家におけるトモウロコシ乾物収量の平均値約16ton/haに比べるとかなりの多収であった。従って,ネピアグラスの栽培と厩肥多施による粗飼料の多収の狙いはほぼ達せられたと云える。処理による生産性の相違は主として葉面積指数(LAI)の相違によるものであったが,刈り取り間隔が長くなると施肥量が中肥区のレベルでLAIは最大値に近くなり,それに伴って多肥の増収効果は小さくなった。刈り取り間隔が短い場合は,再生期間が短いためにLAIと収量がともに小さいが,多肥によりLAIの拡大が促進されて多肥の増収効果は大きかった。施肥量が多いほど多肥の増収効果が小さくなるとすれば,多肥による粗飼料の多大な増収は期待できないことになるので,多肥の増収効果の低減機構の解明と対策を今後検討しなければならない。これまでの解析結果によると,LAIの増大に限界があること及びLAIが大きいほど葉の相互遮蔽が強まることによって,多肥による個葉の光合成能力の増大が個体群の光合成に反映され難いことが,前述の機構の一つと推察された。
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