研究概要 |
ネピアグラスは吸肥力及び乾物生産力の高い牧草であり、畜産農家で生ずる糞尿をネピアグラスの圃場に投入することによって糞尿を処理すると同時にそれに伴う多肥によってネピアグラスの多収を期待できる。この期待を実証するとともにそれを可能とするネピアグラスの生育特性を明らかにする目的で、厩肥の年間全施用量が490ton/haに達する大量の厩肥施用に対する生育反応を検討した。 上記の施用量以下では、ネピアグラス(以下,NAP)及び対象として調査したソルゴ-(SOR)ともに、生育に異常はなく、多肥による粗飼料の多収は実現された。しかし、厩肥施用量が多いほど肥料増施に対する増収率は低下する傾向があった。この増収率の変化に対して生産期間中の葉面積指数(LAI)が関係し、SORのLAIはNAPに比べて小さく、また、NAPにおいても刈り取り間隔を短くするとLAIが小さくなり、それぞれ、増収率の低下は弱まった。このLAIと増収率との関係は肥料増施による光合成・呼吸速度の変化と個体群内個葉の受光状況によると推察された。一方、肥料増施により、SORの根重は顕著に増大したが、NAPの根重は変化しなかった。このことも増収率の変化に関連すると思われたが、根重の変化の草種間差及び増収率との関連の機構は明らかに出来なかった。両草種の圃場ともに土壌中に無機態窒素が蓄積される傾向はなかったが、NAPでは上記の最大施肥量のもとで、窒素の過剰吸収と硝酸態窒素の蓄積が認められ、早期に生長を開始した一部の分げつの稈の硝酸態窒素の含有率は危険水準を越えた。このことも増収率の低下によるものと推察された。本研究の狙いを十分に達成するために、今後、増収率の低下についてその機構を解明し、打開策を検討する予定である。
|