生食用パインアップル果実の品質を栽培条件の改善を通じて向上させることを目的として、まず季節によって大きく変動する品質の実体を、糖類及び有機酸類に着目し比較検討した。供試材料はAnanascomosus(L.)Merr.cv.Smooth caynne、系統N67-10を用いた。サンプルは、まず縦に4等分し、相対する果実切片の一対から各々の上部と下部の約2cmを切り、果肉部分の搾汁液を取り、島津製HPLCを用いて糖及び有機酸類の測定を行った。また同時に、Brix及び滴定酸度も測定した。また、収穫後の貯蔵温度が果実の品質に及ぼす影響についても同様に検討した。結果:Brixは5月から7月まで上昇し、その後10月頃まで一定の傾向を示した。滴定酸度は、5月頃高く、その後低下し7月下旬頃最小値を示し、再び上昇に転じた。従って、糖酸比は7月下旬にピークがあり、春期及び秋期には低下する傾向を示した。果実の上部及び下部では同様の変化を示したが、Brix及び糖酸比の絶対値は果実下部の方が高く、滴定酸度は上下部でほぼ同じ値を示した。糖類の季節変化をみると、シュークロースは、5月に上昇し、その後一定の傾向を示したが、10月に下部で一時的に上昇する傾向が認められた。フラクトース及びガラクトースは5月下旬ごろピークに達し、7月下旬ごろ最小値に、その後再び上昇する傾向を示した。全糖は、5月下旬にピークに達し、7月下旬ごろ低下し、秋に再び上昇する傾向を示した。果実下部と上部とでは傾向は似ているものの絶対値は著しく異なった。従って、本系統の果実は、部位によっても糖含量は均一でないことが伺える。有機酸は、果実上部と下部とでほぼ同様な季節変化を示し、また絶対値においても大きな差は認められなかった。7月下旬頃に最小値を示すV字形変化を示した。全糖と全有機酸の比を前述の糖酸比とを比較すると、両者はほぼ同様な傾向を示した。これらの比には、糖類よりも有機酸特にクエン酸が大きく関与していることが示された。収穫後の貯蔵温度の違いが品質に及ぼす影響を調べたところ、4℃保存ではグルコース及びフラクトースが6日目頃から上昇したが、シュークロースは15℃、エチレン+室温及び4℃保存では8日まで大きな変化は認められなかった。しかし、室温保存は全糖で明かのように、2日目以降急激に低下しているのがわかる。有機酸は、15℃及び4℃保存で貯蔵期間中大きな変化は示さず、24℃及びエチレン区で急激な低下が観察された。従って、パインアップルの貯蔵適温は低温ほど品質の変化が少なく、かつ後熟(追熟)タイプの果実ではないことが示され、収穫後はできるだけ早い機会に食べる方が良いと考えられた。
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