生食用パインアップル果実の品質を栽培条件の改善を通じて向上させることを目的として、昨年と同様、季節によって大きく変動する品質の実体を、糖類、有機酸類、タンパク質、及び消化酵素ブロメラインに着目し比較検討した。また、貯蔵温度が品質に及ぼす影響に関しても調べ、ポストハーベストの問題点を明らかにした。さらに、代表的な沖縄の6品種に関しても上述の要素を調べ、良質パインアップルの条件を決定した。 供試材料は、Ananas comosus (L.) Merr. であった。品種間比較の実験ではSmooth caynneのN67-10、Cayenne×Queenのボゴール、Brancoジュピ-及びペローラペルナンブコ、メイピア群のクリームの6種類を用いた。季節変動及びポストハーベストの実験ではN67-10を用いた。果実を上部、下部、芯部に3分割し、各部からの搾汁液を取り、HPLCを用いて糖及び有機酸類の測定を行った。Brix、滴定酸度、タンパク質、更にブロメライン活性も測定した。 結果:品質の季節変動に関しては、Brix、滴定酸度、糖酸比、糖類、有機酸において昨年と同様の結果が得られ、また、果実上部と下部においても同様な変化を示した。ブロメライン活性は、夏季に低く、冬期に高くなる傾向を示した。全タンパク質は、夏季に高く、冬期に低下する傾向を示した。品種間比較では、良質のパインアップルとして評判のN67-10が、ブロメライン活性もタンパク質も低かった。比活性でみても他の品種に比べ低い値を示した。以上より、良質パインアップルの条件として、生重1g当り100mg以上の糖と5mg程度の有機酸を含み、甘味と酸味のバランスがとれ、さらに、ブロメライン活性の低いものといえる。 収穫後の貯蔵温度の違いが品質に及ぼす影響を調べたところ、4℃保存では糖類はやや増加し、全有機酸は大きな変化を示さなかった。しかし、中でもリンゴ酸が顕著に増加し、低温による影響のひとつとして示された。その他、15℃保存、室温保存の場合、全糖及び有機酸において貯蔵期間中糖酸比が低下する方向に大きく変化した。従って、パインアップルの貯蔵適温は低温ほど品質の変化が少なく、かつ後熟(追熟)タイプの果実ではないことが示され、収穫後はできるだけ早い機会に食べる方が良いと言える。輸入品は長期間低温にさらされ品質の低下を免れないが、沖縄のパインアップル産業はその点を強調すれば生き残りは可能であると考えられる。
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