平成5年度には葉の配列に変異の小さい近縁野性種のトマトを用いて、葉序と維管束走向システムを明らかにした。平均開度は約135度であったので、開度法で表すと葉序3/8に近かったものの、厳密には直列線上に配列する例は少なかった。斜列法では3:5と表され、ほとんど例外なく適用された。維管束は節間に8本認められた。 平成6年度においては、栽培種のトマトで経済的に重要な5品種を選んで、葉序と維管束走向システムについて調べた。その結果、栽培種のトマトは、5品種とも、平均開度が約135度であったので、葉序3/8に近いものとみられたが、近縁野性種に比べて変異が非常に大きかったので、直列線は認められなかった。一方、斜列法で表すと、5品種とも3:5と表され、ほとんど例外なく適用された。したがって、トマトの葉序は栽培種においても斜列法で3:5と表す方がふさわしいと結論された。主茎の維管束は葉の配列に対応して走向し、1つの節間には2本が1束状になった太い維管束が3組と、細い維管束2本の、合計8本が縦走していた。 光合成産物は維管束内を転流しているので、維管束の走向システムに従った特定の転流経路が存在するものと考えられた。光合成産物は葉で合成された後、トマトでは主に糖質の形態で転流するが、その間に代謝されるので、部位によって糖質の濃度と組成が大きく異なる。ところで申請者はこれまでの研究において、葉柄、茎、果実などの同じ部位であっても、何本か走向している維管束間において、転流物質の濃度と組成が異なっていることを、メロンなどのウリ科そ菜について明らかにしてきた。トマトにおいてもこのような可能性が大きいので、本研究計画においては同じ観点からトマトにおける転流経路を繊維束単位で明らかにしつつあり、転流が早く盛んに行われている維管束内での糖代謝を分析中である。
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