研究概要 |
前年度の検討結果から,カキ果実の揮発性成分は種類,量ともきわめて少なく,ポーラスポリマービーズに吸着させたのちに,キャピラリガスクロに加熱導入する方法や吸着物質をエーテルで抽出してガスクロに導入する方法では分析が困難であった。 そこで今年度は,果肉をアセトンとともに磨砕して得た抽出物を直接ガスクロの導入する方法をはじめ種々検討を試みたが,結局のところ,揮発性成分の分離・同定は水蒸気蒸留法によらざるを得なかった。 水蒸気蒸留法によって,カキ果肉切片から十数種類の揮発性成分が分離・同定された。それらは,品種によっても脱渋処理の前後によっても,量的あるいは質的に異なることが明らかになった。ただし,これらの成分の量的・質的変化と果実の香りの差異あるいは香りの変化との関係は明らかではなかった。 官能検査による果実の食味評価によって,昨年度は同じ品種でも脱渋の方法や脱渋後の貯蔵日数が異なると,果実の品質あるいは食味の評価がかなり異なってくることがわかった。本年度はさらに,渋ガキあるいは甘ガキの品種間で,どのような特徴を持つ果実が高い評価を得るのかを総合的に把握しようとした。渋ガキ10品種,甘ガキ8品種を対象とした食味検査の結果,渋ガキでは「甘み」が強く,好ましくない香りが少ないことが,甘ガキではカキ特有の「うま味」が強く,好ましくない香りが少ないことが,高い評価を得るために重要であることがわかった。なお,果肉の糖含量と食味検査の「甘み」の評価との間には直接的な関係は認められなかった。 以上のように,カキ果実の良食味には総じて,「甘み」の強さが最も重要な要因であると思われたが,果肉のテクスチャーをはじめ、「甘み」の強弱を左右する要因については今後検討が必要である。
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