研究概要 |
本年度、本研究費で行った主な事項は下記の通りです。 (1)初期の本格的地形図である迅速図およびそれと同時に作成された『偵察録』を重要な資料とした本研究において、既に検討していた同地形図の不明な植生記号概念の考察を踏まえ、迅速図から関東地方全域の明治前期における植生景観の概要を考察した。 (2)『偵察録』の植生景観に関する記述を総合的に検討することにより,地形図からは読み取ることのできない明治前期における関東地方の植生景観の概要を考察した。 (3)明治前期の植生景観を考える資料となる写真を調査収集した。 (4)写真や絵画をもとにした植生高の分析や、今日では植生の変化などにより困難なことの多いそれらの視点の特定のためにパソコンを利用する環境の整備をある程度行うことができた。 (5)上記(4)の考察を行うために不可欠な現地調査,現在の地形情報等の収集を行った。 その結果、当時,関東地方の里山には,今日とは大きく異なり,草原やそれと同程度のかなり低い植生が相当広く見られたこと,また,森林にしてもかなり低いものが多かったこと,森林の大部分は松林と楢椚林でありその林種分布には地域性が見られたこと,官林や社寺林や屋敷林には、しばしば一般にはない大きな樹木があったことなどが明らかとなった。
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