前年度は、ゲノムセグメント9(S9)の電気泳動移動度の速いもの(L)と遅いもの(U)があり、Lを含む分離株で媒介虫伝搬率がやや低いものがあることを明らかにし、更に塩基配列の解析から、伝搬率の低いLはS9の843番目の塩基がUに比べてAからCに置換しており、AspからAlaのアミノ酸置換を伴なっていることを明らかにした。本年度は更に詳細な解析を行ない以下の点を明らかにした。 1)Lでも伝搬率の高いものについてcDNAクローニングして塩基配列を解析したところ、843番目の置換を維持しながら更に、486番目の塩基がAからGに置換しており、これはAsnからSerのアミノ酸置換を伴なっていた。 2)S9のコードする蛋白質をプラスミドpMALを用いて大腸菌で発現させ、蛋白を精製後に兎に免疫して抗体を作製した。 3)2)で作製した抗体を利用して、純化ウイルス粒子のウエスターンブロッティングをすると、粒子の5つの構造蛋白質の内、外殻に存在する38.6Kのポリペプチドが特異的に反応した。 以上の結果は、ウイルス粒子の表面にある38.6Kの構造蛋白質が、媒介昆虫の受容体と相互作用して、伝搬されることを示唆していた。
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