1.ウイルスゲノムdsRNAを出して、電気泳動すると分離株間でS9の移動度に差があった。S9移動度の遅いものをU、速いものをLとした。Lを持つ株のほとんどは伝搬率が低かったが、Lのみを持つ株でも、伝搬率がUと変わらないものもあった。 2.上記の方法で抽出したdsRNAを鋳型にしてcDNAを作成し、大腸菌プラスミドpUC119でクローニングして、UとLの塩基配列を決定して比較した。両者は同じ1132塩基よりなり電気泳動の移動度の差は長さによるものではなかった。LはUに比べて株によって幾つかの塩基置換が認められたが、全部のLに共通して843番目のAがCに置換していた。この置換が移動度の差を決定しているかを調べるために、この塩基のみを置換したcDNAを作成した後、十鎖と一鎖の両方を試験管内でRNAに転写し、さらにアニールしてdsRNAとし、電気泳動したところ、確かに移動度が速くなることを確認した。この置換はAspからA1aのアミノ酸置換をなっていた。 3.Lでも伝搬率の高いものは、843番目の置換を維持しながら更に、486番目の塩基がAからGに置換しており、これはAsnからSerのアミノ酸置換を伴なっていた。 4.S9のコードする蛋白質を大腸菌で発現させ、精製後に抗体を作製した。この抗体を利用して、純化ウイルス粒子のウエスターンブロッティングをすると、粒子の5つの構造蛋白質の内、外殻に存在する38.6Kのポリペプチドが特異的に反応した。 以上の結果は、ウイルス粒子の表面にある38.6Kの構造蛋白質が媒介昆虫の受容体と相互作用して、伝搬されることを示唆していた。
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