平成5年度に改良を加えたコンピュタ-シミュレーションモデルを、さらに大幅に改善し、計算速度を向上させる目的、および今後このプログラムを類似の他天敵および害虫のシミュレーションに適用可能とするためにシステム内の計算方法を常微分方程式から差分方程式(漸化式)に変更した。これによって、従来やや高めに出力されがちだった多くの率変数の値が適正化され、モデルの予測精度が大幅に改善された。 また、さらに平成5年度に行った複数の施設園芸栽培農家の温室およびハウスの環境温度の採取を6年度も2地点で行い、そのデータをコンピューターファイル化するとともに、上記シミュレーションに組み込むことで、当該環境でのチリカブリダニ利用の可能性を検討した。 これらの分析の結果、四国地方の施設園芸を例にとれば、チリカブリダニの利用はおおむね栽培期間全体を通して可能であると判断された。しかし、8-9月の33℃以上の高温および高知県下での1-2月に発生する5℃以下の低温が天敵の利用にとってかなりマイナスになることも判明し、この2点についての改善が、実用にとって前提条件になると判断された。 開発したコンピューターシミュレーションモデルは、ほぼ実用的なレベルに到達し、これを用いてハダニ発生のパターン、チリカブリダニ放飼後の防除プロセスはもとより、現在のハダニ数から防除期間を指定することで、天敵の必要導入数を推定することもできるようになった。したがって、このプログラムを、チリカブリダニの利用にとっての基本的マニュアルとして利用できることになった。
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