ウイロイドの病原性を制御している構造ドメインの解析を行なうため、3種類のウイロイド、ホップ矮化ウイロイド(HSVd)、カンキツエクソコーティスウイロイド(CEVd)及びトマトapical stuntウイロイド(TASVd)間で構造ドメインの組換えを行った。特に今まで機能不明であった右末端領域(TRドメイン)の機能解析に焦点をしぼって行なった。 1年目においては、HSVdとCEVd間でそれぞれのTRドメインを交換したキメラウイロイドcDNApBS-CE/HS-TRとpBS-HS/CE-TRを作製しクローニングした。また主にPCR法によりCEVdとTASVd間で組換えを行ないCEVdのTRドメインをTASVdのTRドメインで置換したキメラウイロイドcDNApBS-CE/AS-TRを作製クローニングした。 1年目の後半から2年目は上記のキメラウイロイドcDNAをトマトとキュウリに接種して、pBS-CE/HS-TRとpBS-HS/CE-TRが感染性を有しキュウリとトマト中で安定に増殖するが、pBS-CE/AS-TRは感染性を持たない事を示した。以上の結果、塩基配列の上で約50%程度の低い相同性しか持たず、分類上も異なるウイロイドグループに属しているウイロイド間でも複製能を損なうことなく構造ドメインの交換が可能である事を明らかにする事ができた。 2年目はさらに、感染性を有した2種のキメラウイロイドCE/HS-TRとHS/CE-TRの病原性と複製能の詳細な解析を行ない、今まで機能不明であったTRドメインがウイロイドの複製能と深く関与しており、複製能の強弱を介してウイロイドの病原性を制御している可能性を明らかにした。
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