研究概要 |
調査地の放牧地で糞虫類が糞の消失におよぼす影響を糞設置2,5,10日後に地上部に残っている糞塊量と糞虫が地下に埋めた糞球量および糞をケージで覆い糞虫の移入を防げたコントロール区での糞塊量を測定し、それを比較することにより明らかにした。その結果、大型の糞虫類成虫は糞設置後5日以内に糞球を作成し糞から移出することが明らかとなった。大型の糞虫類では6月に成虫が出現するオオマグソが最も糞の埋め込み能力が高かった。一方、小型の糞虫類幼虫は大型の糞虫類が移出し地上に残った糞塊内で糞を摂取し発育しており、今回の調査より、これらの幼虫が糞の消失に重要な役割を果たしていることが示唆された。これまで糞の消失には大型の糞虫類の役割のみ重視されていたが、大型の糞虫は糞塊当たり個体数が多くなると密度効果により作成する糞球の数は少なくなることも示された。それゆえ、糞虫類を利用して放牧地から糞の消失を検討する場合、これまであまり評価されていない小型の糞虫類の幼虫が糞の消失に果す役割も定量化する必要があると思われた。
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