タバコモザイクウイルス(TMV)とジャガイモXウイルス(PVX)の細胞間移行について検討し、以下の結果を得た。 1.TMVの30Kタンパク質遺伝子に種々の欠失変異を導入した変異株をタバコの植物体とプロトプラストに接種し、ウイルスの細胞間移行と30Kタンパク質の細胞内局在を調べた。その結果、30Kタンパク質のC末端の3アミノ酸残基の欠失した変異株ではウイルスの細胞間移行が認められ、30Kタンパク質が野生株と同様プロトプラストの細胞質内に多量に集積した。30Kタンパク質のC末端の31アミノ酸残基の欠失した変異株ではウイルスの細胞間移行がかなり阻害され、30Kタンパク質は少量しかプロトプラストの細胞質に集積しなかった。30Kタンパク質のC末端の77アミノ酸残基の欠失した変異株と10-141番のアミノ酸残基の欠失した変異株ではウイルスの細胞間移行が認められず、30Kタンパク質のプロトプラスト内の集積も認められなかった。 2.光顕レベル及び電顕レベルのin situハイブリダイゼーション法により感染細胞内にTMV-RNAを検出する方法を開発した。さらに、これをもとにして、現在細胞内における、TMVの移行タンパク質とウイルスRNAとの相互作用について検討している PVXのORF2にコードされている25Kタンパク質は本ウイルスの細胞間移行に関与すると考えらている。そこで25Kタンパク質遺伝子のcDNAを大腸菌に導入し、発現させて25Kタンパク質を精製し、これを抗原として抗体を作製した。この抗体を用いて、免疫電顕法により25Kタンパク質がPVXの感染により細胞質に形成された封入体に局在することを明らかにした。これまでウイルスの移行タンパク質の多くは細胞間連絡に局在することが知られているので、PVXの移行タンパク質はこれらとは異なるグループに属する移行タンパク質であると考えられた。
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