研究概要 |
ジャガイモの疫病菌(Phytophthora infestans)から、植物の防御反応誘導因子(エリシター、糖タンパクあるいは脂肪酸)が単離報告されている。疫病菌のエリシターをジャガイモ組織に与えると、細胞膜のプロトンポンプに依存した膜電位が速やかに低下し、それにともなって過敏感反応が引き起こされる(Tomiyama et al.1983)。最近、我々は、エリシターが宿主細胞膜の[H+]ATPaseの活性を強く阻害することをin vitroの研究により明らかにした。一方、ジャガイモ疫病菌の病原性決定因子として過敏感反応抑制因子(サプレッサー、グルカンMr4700とMr440)が報告されている(Doke et al.1979,Furuichi and Suzuki 1989).このサプレッサーは、感染初期の貫入の場面で、発芽胞子から生産され、宿主の過敏感抵抗反応を阻害する。この過敏感反応の制御は、宿主細胞膜の100kDの[H+]ATPaseのリン酸化によることが明らかにされつつある。 これらとは別に、植物細胞の情報伝達に活性酸素類の関与も示唆されている。すなわち、Doke(1983)は、宿主細胞での活性酸素類がエリシターによって誘導され、その誘導は、サプレッサーにより阻害されるとした。 我々は、病原菌の生産する因子による過敏感反応の制御をマーカーとして、解析を行い、宿主と非宿主間での作用の違いを明らかにしつつある。
|