近年、飼料作物のトウモロコシ栽培圃場で外来雑草イチビ(Abutilon the oprasti Medicus)が大発生しており、その防除技術の確立が望まれている。そこで、本研究ではイチビの総合的防除体系を確立するための基礎知見を得る目的で下記の項目について調査を試みた。 1.トウモロコシ畑におけるイチビの雑草害の診断: イチビの発生がトウモロコシより10日間以上遅れるとトウモロコシの乾物収量への影響は少なく、見かけ上の空間的すみわけが生じた。 2.イチビ(雑草型)の生理生態的特性の解明: 高密度条件下でイチビが発生した場合、伸長生長が促進されるが種子生産への乾物分配率は減少する傾向にあった。一方、低密度では分枝が発達し多大な種子生産を行なうことが把握された。 3.イチビ種子の発芽特性: 種子の一次休眠の覚醒は採取後3ケ月目から進行し、強い光発芽性を示した。しかし、採取後2年目の種子は光発芽性を有さず発芽温度幅は拡大した。 4.イチビの種内変異の解明: 雑草型イチビは開花前期間が短く、分枝性に富み、比較的小さい種子を多数生産する点で栽培型イチビと全く異なった特性を示した。現在、日本で問題となっている雑草型イチビはアメリカで問題となっている雑草型イチビと特性が酷似しており、栽培型に由来するものではなく侵入帰化したものと考えられる。 5.前年度生産子実数の差異及び耕起の有無が次年度の発生消長に及ぼす影響: 前年度に生産されたイチビの子実数は次年度の埋土種子数と有意に相関関係が認められた。また、耕起した場合は耕起により休眠覚醒が促進され優占種になりやすいが、不耕起の場合は生育が抑制された。
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