植物は病原体の感染により、生体防御の一環としてある特定のキチナーゼを誘導する。このキチナーゼの誘導機構を解明すれば、病原体に抵抗性のある植物の作製が期待される。そのため、今年度はヤマイモカルスから病原菌により特異的に誘導されるキチナーゼの塩基配列の解析と、カルスと葉におけるキチナーゼアイソザイムの誘導について比較した。 (1)植物病原菌(Fusarium oxysporum)の接種によりキチナーゼを誘導したヤマイモカルスから全mRNAを抽出し、λgt11を用いてcDNAライブラリーを作製した。一方、この特異的キチナーゼのアミノ酸配列を基にしてDNAプライマーを合成し、それと先に作ったcDNAを鋳型にしてPCRを行い、病原菌に特異的なキチナーゼを増幅した。このcDNAをプローブに用いて、先に作製したcDNAライブラリーから病原菌に特異的なキチナーゼのcDNAをスクリーニングした。以上の方法により得られた両cDNAをM13ファージベクターにサブクローニングし、ディデオキシ法により塩基配列を解析した。以上の結果、酵素の全塩基配列を明らかにすることができた。そして、他の植物キチナーゼとの比較によりクラスIVという新しいクラスに属することを明らかにした。この結果についてはシグナル配列の部分がまだ解析中であるため論文にするには至っていないが、1994年5月24-27日にマレーシアで開催されるAsia-Pacific Chitin and Chitosan Symposiumの招待講演で発表する。 (2)つぎに、ヤマイモの葉にF.oxysporumの胞子を感染させキチナーゼの誘導を行い、mRNAの発現を(1)で得られたキチナーゼcDNAでプローブに用いてノーザンブロット解析により追跡した。この結果、mRNAの出現については追試中であるが、葉において誘導されるのはヤマイモカルスでF.oxysporumの菌糸体で誘導されたキチナーゼの他にエチレンで誘導されたキチナーゼも含まれていることが分かった。
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