研究概要 |
1.研究計画に従って,平成6年3月現在,九州大学教養部生物学教室所蔵の日本列島産の双翅目昆虫の約2万頭の標本を,系統分類学及び形態学的研究ができる状態にする標本作成作業を完了し,現在も主に北九州の平地に普遍的に生息する双翅類標本約2万頭の標本作成に着手した. 2.上記の研究用標本,従来当研究室に保存されている標本,兵庫県立人と自然の博物館所蔵の田中梓コレクションの双翅類標本に基づいて,日本産双翅類の科及び亜科の検索システムをほぼ完了し,現在これに付随する検索用の形態図等の作成が進行中である. 3.検索に用いる形態形質の研究も進行し,分類学者以外の研究者の利用しやすい形質の検索,形質の図解表現に関する様々な改良を行った. 4.日本列島からまったく記録のなかった双翅類の分類群を多数発見した.特にショウジョウバエ科に近縁のTeratomyzidae,Periscelididaeなどのように,科として日本列島から未発見であったものも検出されたし,科の検索表作成の過程でベッコウバエ科に近縁な新しい科の発見もあるなど,わが国の双翅類系統分類学の研究上重要な新知見が得られた. 5.双翅類の検索に極めて重要な翅の翅脈相に関する研究を進める過程で,翅基骨と翅脈との連結関係の形態の調査によって,旧来の翅脈相解釈の中で翅の後半部の解釈の誤謬が発見された.この点は,4.の発見以上に重要な新知見で,双翅類と他の昆虫類の系統進化関係を考察する上での意義が極めて大きい.本研究での検索システムは今回到達したこの翅脈相の新しい解釈に依拠して行った.
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