研究概要 |
1.研究計画に従って,平成7年2月現在,九州大学大学院比較社会文化研究科地球自然環境講座所蔵の日本列島産の双翅目昆虫の約1万頭の標本を,系統分類学及び形態学的研究ができる状態にする標本製作を完了し,昨年度作成の約2万頭の双翅類標本と共に本研究の基礎的な資料とした. 2.上記の標本,従来当講座に保存されている標本,兵庫県立人と自然の博物館所蔵の田中梓コレクションの双翅類標本に基づいて,頭部,胸部の外骨格の形態および刺毛配列,触角及び脚など付属肢の構造,翅の脈相,雄交尾器及び♀産卵・交尾器の構造等についての比較形態学的研究を行なった. これらの形態学的資料に基づいて,日本産双翅類の中でこれまで属の同定が困難であった幾つかの科について,亜科,属,及びそれに含まれる代表的な種についての検索システムの作成作業を行い,検索を容易にするための簡明な形態図を作成した. 4.特に,糸角亜目の中のキノコバエ科,及び短角亜目の中のオドリバエ科,一つの科としては著しく属が多い上に,形態分化が激しく,従来我国では属の検索がかなり困難であったが,これら2科について,本研究によって従来日本列島から記録されている属の他に多数の未記録の属を発見し,これらを含めた図解検索をほぼ完成し,後の科についてはその成果を出版準備中である.また,この図解検索の有効性について,それを実際に検索者に使用させて,改良をはかった. 上記2科以外の諸科についても,本研究課題に沿った研究が著しく進行し,この成果は今後これらの科の図解検索システムを近く完成するための十分な基礎となった.
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