電子技術を応用して害虫を誘引・忌避防除するために次の3つの研究を行った。 1.芝生を加害する蛾類と果実を吸収する蛾類を防除するために、コウモリの採餌超音波パルスを参考にして、種々の合成超音波信号と放射装置を調査し、最も蛾に忌避行動を起こす信号刺激として周波数25kHzの持続時間30ミリ秒、間隔50ミリ秒のパルスを30発、3秒から7秒の間隔で放射すると、最低30dBの音圧で蛾が顕著な逃避飛翔をすることが判明した。超音波放射装置は従来の圧電駆動の高出力のランジュバン型振動子による衝撃パルスではなく、立ち上がりに緩やかな振幅変調をもたした低価格のコンデンサー・マイクロホンを発振素子とした101個の集積形スピーカーで音源距離3mから有効であることが判明した。2.ヤブカ類の誘引殺虫防除として、蚊の飛翔音に基づく音信号を組み込んだトラップに蚊を誘引し、接近してきた蚊を電撃ショックで防除する装置を作成した。蚊の飛翔音は種ごとにEPROM化した ICメモリーによって記憶させ、ソ-ラ駆動で発振させるものである。電撃ショックは蚊を焼殺するような高圧ではなくて、60V以下の低電圧であり、飛翔に関係する翅や触角を変形させることで防除は十分であることが分かった。3.溶液の粒子が10〜30μという超微粒子で噴霧する超音波霧化貫流ポンプによる害虫の防除について、実験装置を完成させた。本機は超音波振動素子が高圧パルスによって共振して空洞化現象によって液体を噴霧するもので、効果的に溶液を植物の葉面やそれに付着しているダニ、アブラムシ、コナジラミ類に散布する装置である。本機はまた、2000ボルトの高圧をかけて霧化粒子を正あるいは負の極で放射して空中に帯電粒子を散布して任意の電荷を帯びた電場を形成することを可能にした。この装置の害虫への生理的な影響は実験装置の不足のために調査できなかった。
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