1.木材腐朽菌類(担子菌類)と各種細菌類との培地上での相互作用 菌蕈研究所保有および新たに採集した木材腐朽菌類(計53種)と、Pseudomonas属菌を主体とする6種の細菌との相互作用を素寒天上で検討した。その結果、53種のうち38種の木材腐朽菌類が、供試細菌1種以上に対し、コロニー内への菌糸の侵入と、細菌細胞に対する溶菌性を示した。これらの木材腐朽菌の菌糸は、通常、細菌コロニーに対し方向性を持った伸長を示し、細菌コロニーへの侵入後、コロニー内で旺盛な分枝を行った。ある種の糸状菌に対して強い拮抗力を持つことで知られるPseudomonas cepaciaと、キノコ類に対して病原性を持つP.tolaasiiに対しても、それぞれ27および23種の供試菌が溶菌性を示した。一方、細菌溶菌性を示さなかった菌株のうち12種では、P.cepaciaによる生育阻害、あるいは菌糸溶解が認められた。シイタケについては、採集地の異なる4菌株を供試したところ、細菌溶菌力および病原細菌(P.tolaasii)に対する抵抗性に明らかな差違が認められた。 2.In-vitro Pitting Tests 異なるキノコの罹病子実体から分離されたPseudomonas tolaasii5菌株[シイタケ 1;エノキタケ 1;ヒラタケ 2;マッシュルーム(ツクリタケ)1]と、シイタケの罹病子実体から分離されたP.fluorescens1菌株のシイタケ子実体に対する病原性を、In vitro Pitting法を用いて調査した。その結果、供試した6菌株のうち、ヒラタケからの1菌株が最も強い病原性を示した。このことは、この細菌病が、罹病したヒラタケから健全なシイタケに、昆虫などの媒介によって感染しうることを示唆している。これに反し、エノキタケからの分離株はシイタケに対する病原性を持たなかった。
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