重金属の中で人間の健康被害に直接関係するものとして、カドミウムと水銀が挙げられる。カドミウムはWHOが勧告している日摂取許容量と平常人の日摂取量が、現在においても既に多くの国で非常に接近している汚染元素として、特別の注目をあびてきている。 日本では、腎臓皮質中のカドミウム濃度と日摂取量が世界で最も高く、非汚染地域の住民のカドミウム日摂取量がWHOの勧告値と既に重なってしまっている。その摂取経路を特定し軽減対策を考える上にも、日本における河川水、土壌および産米中のカドミウムの自然賦存とバックグランド濃度を特定することは重要な意義を持っている。そこで、本研究においては、上記の目的を達成するために、分析方法の検討、試料の収集、分析作業を並列して進めてきた。 分析方法については、ppbレベルの測定にはフレームレス原子吸光法が有効であるが、pptレベルの測定にはICP-MSが必要である。水、土壌と米の分解液の前処理として、キレートろ紙、イオン交換ろ紙の利用条件の検討、市販の各種試薬の純度の検定、各種の脱イオン水、蒸留水、ウルトラピュア水の純度の検定を行った。 各地の湧き水、河川水、温泉水についてカドミウム濃度を測定し、その範囲を特定した。土壌についても、農地、林地、その他について土壌中のカドミウム濃度を特定した。産米については、中国米、タイ米、米国産米等との比較で、日本産米のカドミウム濃度が相対的に高い値を示すことを明らかにした。
|