アルミニウム(Al)イオンは土壌溶液中で複雑なイオン形態をとり、植物にたいするそれらの毒性は異なると考えられている。本研究では、同一培地pHで、Alイオン種(モノマーAl、ポリマーAl)に対するイネ、オオムギの生育反応を、個体植物あるいは培養細胞レベルで比較した。 AlCl_3を直接水に溶かしてモノマーAlイオン培養液を、またNaOHでpHを調製した100mM AlCl_3溶液(ポリマーAlイオン)を希釈して所定のAl濃度の培養液を作成し、Ferron(8-hydroxy-7-indo-5-quinolinesulfonic acid)で測定したところ、両培養液間にはポリマーAlイオン濃度に大きな差が認められた。これらのAl処理液と完全水耕液を別個に用意し、植物体を毎日交互に移し変える方法でAlイオンとリン酸の沈殿を避けて約2週間栽培し、植物の生育、根の伸長、Al含有率を測定し、Alイオンの生育阻害の強さを比較した。その結果、Alイオンの生育阻害はイネよりもオオムギにおいて大きく、また両植物の場合とも根のAl含有率にはポリマーAl、モノマーAlイオン処理間に大差が認められなかったが、Alイオンの生育阻害はモノマーA1イオン処理で大きくなった。 モノマーAl、ポリマーAlをそれぞれ100μM添加した培地にイネ、オオムギ培養細胞を移植し、10日間培養したところ、Alイオンの生育阻害はイネよりもオオムギにおいて大きく、Al耐性の順位は培養細胞レベルと個体植物レベルで一致した。しかし、Alイオンの生育阻害においてAlイオン種間に差が認められず、今後植物細胞の培養法などを検討する必要があると考えられた。
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