希釈平板法によって、強酸性茶園土壌に生息する微生物の検討を行った。計数に用いる培地のpHについて検討した結果、pH4.5に調整したカゼイン・デンプン培地で得られた放線菌数はpH7.0で得られた菌数より顕著に多く、好酸性あるいは耐酸性放線菌の存在が示唆された。そこでpH4.5培地上に生育した放線菌を単離、純化したのち、生育に対するpHの影響、及び単離株の化学分類学的検討を行った。 1.全単離株はpH4及び7培地での生育の有無から好酸性菌、耐酸性菌、好中性菌の3群に分けられた。それぞれの割合は5.6:1:で、好酸性放線菌の優占性が確認された。 2.単離した各株のDAPとメナキノン組成を調べた結果、好酸性菌は全てmeso型のDAPとH9のメナキノンを有していた。これらはさらに、構成糖より2群に分けられた。第1群はA型(アラビノース/ガラクトース型)でミコール酸を有せず、気中菌糸に長い胞子鎖が観察された。また第2群はD型(アラビノース/キシロース型)でやはり気中菌糸を形成し、電子顕微鏡で長い胞子鎖が認められた。 3.耐酸性株はすべてLL型のDAPであり、メナキノンはH9であった。気中菌糸はらせん状で、Williamsらがかって森林土壌から単離したStreptomycesあるいはその近縁種であることが示唆された。 4.これらの菌株が生成する細胞外酵素について若干の検討を行った。セルラーゼは耐酸性菌よりも好酸性菌で活性が高く、キチナーゼは全ての単離株で強い活性を示した。いずれの酵素とも、至適pHは通常報告されているものよりも低く、生息環境に適応していることが推察された。
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