マングローブ群落は日本の南西諸島にも分布し、満潮時には海水による塩水に浸り、干潮時には干上がるような入り江や河口付近の堆積泥上に形成される。このような境界域は生物生産や陸地化や環境浄化の面だけでなく、水産資源の涵養、環境保全や国土保全等に大きな機能的役割を果すと考えられる。しかし、マングローブ群落における陸地化のメカニズムや表層堆積泥の内容、上げ潮および下げ潮時に流入・流出・移動するコロイド状浮遊物粒子の特性や動態等については不明なことが多い。 ここでは、石垣島の吹通川流域のマングローブ群落を形成する河川流域で、周辺の土壌表土、群落や河川中の表層堆積物、潮の干満に伴って流入・流出・移動する浮遊物粒子、および表層堆積物表面等についてそれらの内容や特性を調べた。 全般的には、河川中の表層堆積物での鉱物組成に比べて、マングローブ群落中での鉱物組成の変動は小さく、群落中の下流側から中流側への表層堆積物の鉱物組成は安定化する傾向にあった。また、河川中や群落中の表層堆積物の一次および二次鉱物組成の特徴は、海中の表層堆積物および陸地側の土壌表土の鉱物組成のによく類似し、それらの特徴を反映して各堆積環境の異なる地点ごとに構成成分の質的、量的違いが認められた。そして、マングローブ群落内の表層堆積物では、潮の干満に伴って流入・流出・移動する浮遊物粒子の内容や特性に類似性が認められ、特に、群落中に生息する生物類の昼間の諸活動、群落の縁付近に多い腐植含量および風雨や降雨や波浪の強弱等による相互作用が、群落内部における堆積作用や陸地化に及ぼす大きな要因であることを示唆した。
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