研究概要 |
エナシロキシンIIa生合成の中間体と思われるエナシロキシンIVaを酸化して、エナシロキシンIIaとするエナシロキシン酸化酵素が生産菌の培養上清に見いだされ、この酸化酵素の精製を試みた。アカパンカビNeurospora crassa IFO 6068株をCzapek-Dox培地で培養し、その培養上清にFrateuria W315株を30℃30時間培養した。その遠心上清を粗酵素液とし、限外ろ過、超遠心、硫安塩析、Butyl-Toyopearl 650M,Hydroxylapatite等を用いて精製した。その結果SDS-PAGEにおいて単一なバンドとなる標品が得られ、非活性は170倍に上昇した。SDS-PAGEとゲルろ過(FPLC)により、分子量はそれぞれ約73kDa、約79kDaと推定され、本酵素はモノマーであることが示唆された。また至適温度は60℃、至適pHは9.0、等電点は6.2であった。基質としてはエナシロキシンIVaおよびIIIa以外は全く反応せず、特異性が非常に高かった。本酵素はMg^<2+>、Ca^<2+>を要求し、二価の重金属イオンやカルボニル試薬により阻害され、キレート剤、SH試薬そしてKCNやNaN_3等により殆ど影響を受けなかった。また本酵素から補酵素を取り除いたアポ型の酵素にピロロキノリンキノン(PQQ)とMg^<2+>を添加したところ活性が回復した。しかし本酵素から単離した補酵素画分のスペクトル解析によりPQQと異なる吸収ピークが検出され、また薄層クロマトグラフィでもRF値が異なるので、PQQ類縁ではあるが新しい補酵素である可能性が示唆された。
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