Erwinia uredovoraは小幡らによりイチゴの葉より単離された氷核活性細菌である。この氷核細菌は氷核物質を菌体外に放出する点が既知の氷核細菌とは異なっていた。そこでこの氷核細菌の氷核蛋白質をコードする遺伝子のクローニング及び全塩基配列の決定をした。 Erwinia uredovoraゲノムDNAをフェノール法により抽出し、制限酵素Sau3AIにより部分消化した。ファージベクターλEMBL3へ導入しゲノムライブラリーを得た。プローブ作製のため、既に単離・解析されているErwinia ananasの氷核蛋白質の遺伝子であるinaAのNドメイン・Cドメイン領域の配列をもとに、センス・アンチセンスのオリゴヌクレオチドプライマー(40mer)をそれぞれ合成し、Erwinia uredovoraゲノムDNAを鋳型にPCRによりフラグメントを作製した。これをプローブとして先のゲノムライブラリーをスクリーニングした結果、全長をコードすると思われるλinaU22クローンを得た。このクローンをプラスミドベクターpUC18へサブクローニングし大腸菌に組み込んだところ、その大腸菌は強い氷核活性(T_<50>=-4.5℃)を示し、λina22が氷核蛋白質をコードする遺伝子であることが判明し、この遺伝子をinaUと命名した。そこで全塩基配列の解析をジデオキシターミネーター法により行った。その結果、inaUは3102塩基よりなり、推定されるアミノ酸は1034個であった。氷核細菌に共通に見られるRドメインの繰り返し配列をはじめNドメイン・Cドメインを有し既知の氷核蛋白質と非常に相同性が高いことが明らかとなった。しかしRドメインのアミノ酸残基数は832個と、解析された氷核蛋白質の中で最小であった。
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