研究概要 |
グルコアミラーゼがブドウ糖の工業生産に大量に用いられている大きな理由は、本酵素がデンプンのα-1,4結合のみならず、α-1,6結合をも加水分解し,デンプンを完全にグルコースにまで分解できることである。しかし、α-1,6結合加水分解反応についての知見は非常に少ない。 本研究ではまず、グルコースがα-1,6結合で重合したいくつかのイソマルトオリゴ糖を基質として用い、Rhizopus属のグルコアミラーゼによるそれらの加水分解反応の反応動力学定数を求め、これに基づいて、イソマルトオリゴ糖加水分解反応に関する本酵素のサブサイト構造を評価した。 その結果、サブサイト番号1から7までの各サブサイトの、グルコース残基に対する親和力はそれぞれ-6.0、13.8、4.6、1.5、0.6、-0.5、および0.2kJ mol^<-1>と求められた。また真の加水分解定数は10.2s^<-1>と評価された。これらの値に基づく反応動力学定数の計算値は、実験値をよく再現した。 また、比較的重合度の小さい種々のマルトオリゴ糖およびイソマルトオリゴ糖の加水分解反応を高速液体クロマトグラフィーを用いて追跡し、通常の実験条件下では、いわゆるマルチプルアタックやシングルチェインアタックは起きていないことを見いだした。これによりサブサイト理論の適用の妥当性を実験的に確認した。重合度の長い基質ではマルチプルアタックが観測されていることから、本酵素の二つのドメインのうち、触媒反応には直接関与していない側のドメインが、基質の認識に何らかの寄与をしている可能性も考えられる。 一方、本酵素と、その強力な阻害物質である1-デオキシノジリマイシンとの結合反応を、等温滴定熱量計で測定した。反応熱の絶対値はかなり小さいが、しかし螢光滴定から予測された値より大きなエンタルピー変化が観測された。
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