Rhizopusのグルコアミラーゼのオリゴ糖加水分解様式を調べるために、グルコース重合度n=3-7のマルトオリゴ糖とイソマルトオリゴ糖それぞれを基質に用いて、基質の減少と生成物の増加の速度を高速液体クロマトグラフィーによって観測した。水解反応はpH4.5、25℃で行った。その結果、いずれの基質(重合度n)の場合も、基質の減少初速度と、グルコースおよび重合度(n-1)のオリゴ糖の生成初速度とは一致した。これは、本酵素の反応様式が、非還元性末端側グルコシド結合を一回のみ加水分解した後、基質は続いて水解反応を受けることなく直ちに酵素を離れる、という「ランダムアタック」機構であることを示す。これにより、これまで評価されたマルトオリゴ糖とイソマルトオリゴ糖それぞれに対するサブサイト構造が、すくなくとも重合度が比較的小さい基質に対しては妥当であることが確認された。 Aspergillus nigerのグルコアミラーゼに対する種々のリガンドの阻害活性を、基質p‐ニトロフェニルα‐グルコシドを基質として測定した。β‐シクロデキストリンは阻害活性を示さなかった。グルコノラクトンは非拮抗型、1‐デオキシノジリマイシンは拮抗型の阻害を示した。これらの結果は、β‐シクロデキストリンは本酵素の澱粉結合ドメインに結合するが触媒ドメインとは相互作用がないこと、グルコノラクトンは活性部位以外の部位に結合して不活性な三重複合体を形成すること、また1‐デオキシノジリマイシンは活性部位(特にサブサイト2)に結合することを示す。後者2つのリガンドの阻害形式は、Rhizopusのグルコアミラーゼに対する場合とは全く異なっている。このことから、AspergillusとRhizopusのグルコアミラーゼでは、反応様式が異なる可能性も示唆される。
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