研究概要 |
微生物起源のノイラミニダーゼを用いてシアロ糖鎖を合成することを最終の目的としして、各種のノイラミニダーゼの酵素化学的性質を検討した。また、予備的にシアリルラクトースの合成を試みた。 1.放線菌ミクロモノスポラ由来のノイラミニダーゼ(M酵素)の酵素化学的性質:コロミン酸を基質として本酵素反応により生成するシアル酸をチオバルビツール酸法により定量した。pH5,37℃において0.17μg/mlの酵素を用いて、ミカエリス定数Km,0.24mg/ml、最大速度Vmax,6.6μM/minと求められた。基質高濃度においてもミカエリス・メンテン式に従い、ストレプトコッカス・ノイラミニダーゼ(S酵素)で観測された基質阻害は見られなかった。また、M酵素はS酵素に比べて33倍も基質に対する結合が強いことが示された。両酵素活性に対するNaClの添加効果を調べた。両酵素ともNaCl濃度を0.5Mまで上昇させると、活性は15%に低下した。これ以上のNaCl濃度ではそれ以上の活性の変化は認められなかった。NaClはKm値の上昇を引き起こし、Vmaxには影響を与えなかった。すなわち、NaClは酵素と基質との相互作用を弱めることにより酵素活性を低下させることが示された。 2.S酵素を用いるシアリルラクトース(SL)合成:N-アセチルノイラミン酸0.53mM,ラクトース0.48mM,S酵素2.42mg/ml,37C,pH6.5にて3時間反応させたのち、タンパク質除去後、HPLCにてSLの定量を行った。HPLCにはTSKgel Amido-80カラムを使用し、示差屈折計RI-8020(本計画で購入)および紫外部吸光度により検出した。SLの合成が認められた。その収量は反応に供した基質の1-2%であり、今後、反応の平衡をSL合成側へずらせるための工夫が必要であると考えられる。
|