前年度において硝酸塩(NO_3^-)によって発現誘導されるイネ根フェレドキシン-NADP^+レダクターゼ(FNR)cDNAを単離し、その塩基配列を決定した。本年度は本cDNAをプローブとして、イネゲノムライブラリー(EMBL3)からゲノムクローンの単離を試みた。その結果、4×10^5ファージ当り5個のゲノムクローンを取得した。これらのゲノムクローンは、すべて同一クローンであることを認識し、その1つについて全塩基配列(3.9kb)を決定した。本遺伝子は5個のイントロンによって分断された6個のエキソンから構成され、エキソン/イントロンの境界はAG/GT法則に一致した。また翻訳領域のアミノ酸配列は対応するイネ根FNR cDNAのそれと同一であった。プライマー伸長法によって転写開始点を決定し、それに基づき5'上流域の塩基配列の特徴を解析した結果、本遺伝子のプロモータ領域にはTATA-、CAAT-、およびGC-ボックスが存在すること、さらにその上流域にはATCAA(A/C)配列が4ヶ所に、AAAGTTTTTTTT配列が2ヶ所に存在することが判明した。前者は、多くの真核生物の遺伝子のプロモーター領域に存在するGATA配列(本遺伝子ではアンチセンス鎖に存在)に類似している。さらにアカパンカビとタバコの硝酸レダクターゼ遺伝子のNO_3^-誘導に関与する塩基配列とも類似性がある。したがってATCAA(A/C)配列は本遺伝子のNO_3^-による発現誘導に関与することが想定される。このような可能性を実証する目的で、ゲル移動度シフト法によって転写制御蛋白質因子との結合を解析した。その結果、イネ葉核抽出物にはこの塩基配列に特異的に結合する蛋白質が存在することが判明した。しかしイネ根核抽出物では確認することが出来なかった。
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