研究概要 |
フェレドキシン-NADP^+レダクターゼ(FNR)は光合成電子伝達系の最終段階の可逆反応(Fd_<red>+NADP^+=Fd_<ox>+NADPH)を触媒するフラビン酵素として知られている。しかし最近非光合成器官にも類似の酵素が存在し、フェレドキシン(Fd)依存反応に必要なFd_<red>を供給することが示唆されている。しかし後者の遺伝子構造とその発現制御の機構は全く知られていない。 平成5年度においてイネ葉と根の両器官に発現するFNR cDNAを、それぞれ単離し、塩基配列を決定した。その結果、イネ葉と根のFNR cDNAの成熟アミノ酸配列の相同性は49%にすぎないこと、後者のmRNAはNO_3^-によって特異的に発現誘導されることを報告した。 6年度にはNO_3^-による根FNR遺伝子の発現機構を解明する目的で、ゲノムDNAのクローニングを行い、その全塩基配列を決定し、塩基配列の特性を明らかにした。 イネゲノムライブラリー(EMBL3)から、根FNR cDNAに対応する全長3.9kbのゲノムDNAをクローニングし、その構造を解析した。その結果、根FNR遺伝子は5個のイントロンを含む6個のエキソンから構成されることが判明した。プライマー伸長法によって転写開始点を決定し、5'上流領域の塩基配列の特徴を明らかにした。即ち本遺伝子のポロモーター領域にはTATA^-、CAAT^-,GC^-ボックスが存在すること、さらにその上流域にはATCAA(A/C)配列(4ケ所)とAAAGTTTTTTTT配列(2ケ所)が存在することが明らかになった。前者の塩基配列はNO_3^-による遺伝子発現の誘導に関与することが想定されるので、ゲル移動度シフト法によって転写制御蛋白質因子との結合を解析した。その結果、イネ葉核抽出物には、これらの塩基配列を含むDNAと結合する蛋白質が存在することが明らかになった。しかしイネ根核抽出物では確認できなかった。
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