研究概要 |
平成6年度は、前年度で取得したPseudomonas aeruginosaのリン酸走化性とアルカリホスファターゼのリン酸欠乏条件における誘導発現を負に制御する因子の遺伝子を含むDNA断片と走化性(che)遺伝子を含むDNA断片について解析し、以下の成果を得た。 まず、サブクローニングと相補試験により負の制御遺伝子が存在する領域を限定し、DNA塩基配列を決定した。塩基配列の情報をもとにコンピュータ解析した結果、負の制御遺伝子は大腸菌のPhoレギュロンの負の制御遺伝子であるphoUと相同な遺伝子であることがわかった。P.aeruginosaのphoUの上流に4つのORFが見いだされ、phoUとオペロンを形成していることがわかった。4つのORFのうち2つは大腸菌のリン酸特異的膜輸送系をコードするpstBとpstAとに高い相同性を示したが、残りの2つはどの遺伝子にも相同性を示さなかった。遺伝子破壊等により各遺伝子を欠損した変異株を作成して解析したところ、これら遺伝子は低濃度のリン酸の取り込みに必須であり、かつphoUと同様にリン酸走化性とPhoレギュロンの負の制御にも関与していることがわかった。 次に,che遺伝子を含む10-kbのDNA断片についてDNA塩基配列を決定しコンピュータ解析した結果、4つのche遺伝子、cheY、cheZ、cheA、cheBがこの順にクラスターを形成していることがわかった。これらの遺伝子についても遺伝子破壊株を作成し、それぞれの遺伝子産物の機能についての情報を得た。また、前年度取得した走化性変異株の解析から、cheBの下流の既知のどのche遺伝子とも相同性を示さない走化性遺伝子が存在することがわかった。 以上、リン酸認識機構における情報伝達経路に関する情報が多数蓄積され、情報処理ネットワークの解明に向けた次のステップ、たとえばリン酸以外の物質に対する飢餓応答とリン酸認識機構との情報の乗り入れなどの解析に進むことが可能となった。
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