Aspergillus nigerの生産するアミン酸化酵素を使用する新しいヒスタミン計、あるいは鮮度計の開発が諸外国で進められている。本酵素の産業上の利用を促進するためにも、本酵素に関する2つの未解明な点を早急に解決する必要に迫られている。ひとつは、本酵素の補欠分子族の実態の解明であり、他は本酵素の糸状菌細胞における局在性である。 補欠分子族の実態について研究するために、酵素を大量に調製したのち、阻害剤で酸素を阻害して得られる、不活性化酵素を加水分解して、特徴的に着色しているペプチド画分を精製、単離した。単離されたペプチドのNMR測定とMASSスペクトルの結果、従来報告されていた補欠分子族に形状は類似しているようであるが、存在形式が従来の考えでは説明できないことが明らかになった。次年度に、さらにこの点について究明の予定である。 一方、酵素の局在性を知るために、精製酵素を使用して抗体を調製するとともに、菌糸体からスフェロプラストを調製し、これを免疫化学的に抗体によって処理する方法を試みた。この過程と、上記の酵素の精製過程両方から、Aspergillus nigerには2種類の互いに異なるアミン酸化酵素が生成されている可能性が示唆された。これは、従来アミン酸化酵素をコードしている遺伝子が2つ知られているが、そのうち1つが発現すると考えられていたのに反して、2つの遺伝子が2つの別々の酵素を発現していることを示していて、新しい研究へとさらに発展する可能性を示唆している。次年度には、従来から試みているスフェロプラスト法に加えて、菌糸体を輪切りにしたのち、抗体で処理する方法も試みることで、アミン酸化酵素の局在性が完全に解明できるものと期待できる。
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