Aspergillus nigerのアミン酸化酵素は1960年代初頭に研究が開始されて以来、産業界で種々な応用面をもつ酵素として評価されてきた。一方、本酵素の局在性や補欠分子族の実態については不明な点が多く残されていた。本研究ではこれらの点に焦点をしぼって研究を行った。 Aspergillus nigerが2種類の分子量の異なるアミン酸化酵素を同時に発現生成していることを明らかにして、それらの完全精製を達成した。精製酵素のうちの一方、AO-Iは75kDaの同一サブユニットからなる2量体であり、他方は80kDaの単量体であった。酵素化学的性質は、基質特異性や阻害剤特異性は基本的に同じであった。両者ともTPQを補欠分子族として有することも確認された。N-末端アミノ酸配列には相違がみられたほか、銅含量にも差異がみられた。 両者に特異的な抗体を調製して、酵素との反応性を検討した結果、両酵素は互に異なる免疫学的特徴をもっていることが明らかになった。また補欠分子族のTPQはGluとエステル結合して存在する可能性を示すことができた。他の多くのアミン酸化酵素とは基本的に異っていることが確認された。 一方、アミン酸化酵素の局在性に関して検証を加えた結果、菌糸体表面に酵素が局在することが、活性染色法によって明らかになった。しかし、AO-IとAO-IIのいずれが表層に局在しているかについては、決定的な答は得られなかった。しかし、両者が別々に局在することで生理学的機能を発揮しているに相違ないものと考えられる。
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