研究概要 |
誘導型D-フェニルセリン脱水素酵素生酸菌をPseudomonas syringaeと同定すると共に,本酵素を均一に精製し,種々の性質を明らかにして,構成型D-スレオニン脱水素酵素の性質と比較検討した。本酵素は,構成型D-スレオニン脱水素酵素と同様D-フェニルセリンの水酸基の酸化を触媒し,反応産物としてalpha-アミノアセトフェノンが同定された。本酵素の分子量,サブユニット構造,最適pHなどの性質はD-スレオニン脱水素酵素の性質と類似している。しかし,両酵素の熱安定性,基質特異性,補酵素特異性が異なること,タルトロン酸,マロン酸,ピルビン酸によっては阻害されず,p-CMBやHgCl_2によって阻害されることから,D-スレオニン脱水素酵素とは異なる性質を有している。また,N-末端27アミノ酸配列を決定して,NADP^+結合部位がN-末端領域に存在していることを明らかにした。一方,D-スレオニン脱水素酵素をBrCNで分解し,得られたペプチドのアミノ酸配列に基づいて合成したオリゴヌクレオチドをプローブとして用いて,コロニーハイブリダイゼーションでD-スレオニン脱水素酵素遺伝子のE.coli JM109へのクローニングを試み,D-スレオニン脱水素酵素遺伝子を含むと思われるプラスミドpDTDH14とpDTDH35を得た。これらの制限酵素地図を作成し,サブクローニングを行い,約2.4kbのSmaI‐EcoRI挿入断片を有するpDTDH4‐2と約2.7kbのEcoRI‐EcoRI挿入断片を有するpDTDH35‐1を得ているが,D-スレオニン脱水素酵素の構造遺伝子の塩基配列を決定するために,さらに,サブクローン化,並びにプラスミドのデレーションを行っている。
|