研究概要 |
誘導型D-フェニルセリン脱水素酵素生産菌をPseudomonas syringaeと同定すると共に、本酵素を均一に精製し、種々の性質を明らかにして,構成型D-スレオニン脱水素酵素の性質と比較検討した。本酵素は構成型D-スレオニン脱水素酵素と同様D-フェニルセリンの水酸基の酸化を触媒した。本酵素の分子量、サブユニット構造、最適pHなどの性質は、D-スレオニン脱水素酵素の性質と類似しているが、酵素の熱安定性、基質特異性、補酵素特異性、阻害剤に違いが見られることから、D-スレオニン脱水素酵素とは異なる酵素である。また、N-末端27アミノ酸配列を決定して、NADP結合部位がN-末端領域に存在していることを明らかにした。さらに、両酵素の構造上の違いを明らかにするために、P.cruciviaeのD-スレオニン脱水素酵素をBrCNで分解し、得られたペプチド22のアミノ酸配列とN-末端、C-末端のアミノ酸配列を決定した。これらのアミノ酸配列に基づいて合成したプライマーを用いてPCRを行い、特異的に増幅されるDNA断片をpUC18に連結して、E.coli JM109に形質転換した。一方、P.syringaeのD-フェニルセリン脱水素酵素遺伝子についても、精製酵素からペプチドを単離し、アミノ酸配列を決定して、N-末端、C-末端のアミノ酸配列、ペプチド18のアミノ酸配列に基づいて、プライマーを作成した。これらのプライマーを用いてP.syringaeの全DNAを鋳型としてPCRを行い、増幅された2種類のDNA断片をpUC18に連結してE.coli JM109にクローン化した後、塩基配列を決定した。両酵素の一次構造を完全に解明することはできなかったが、N-末端、C-末端アミノ酸配列に違いが認められた。
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