研究概要 |
スクロースを炭素源とする酵素生産用液体培地でAspergillus niger817 株を30℃で120時間振盪培養後の培養炉液からDEAE-セルロファイン、続いてQ-セファロース HP カラムクロマトグラフィーで電気泳動的に単一な2種のイヌリナーゼ、P-IA(350U/mg)とP-IB(340U/mg)を単離精製した。両酵素の分子量は68,000(P-IA)と70,000(P-IB)であった。いずれの酵素もイヌリンに特異的に作用し、スクロース、ラフィノースには作用しなかった。また、イヌリンの主要な加水分解産物は、イヌロトリオースとイヌロテトラオースであり、両酵素のイヌリンに対する作用はエンド型であった。イヌリンに対する見かけのK_m値は0.48(P-IA)と0.50mM(P-IB)であった。 A.niger817を上記液体培地で30℃、120時間振盪培養した液体麹(150ml)にイヌリン(シグマ社製)45g、硫安0.45g及びリン酸一カリ0.15gを添加した。この培地(初発pH5.0)にSaccharomyces cerevisiae1200を1×10^8/mlとなるように接種し、30℃で発酵させ、15時間後にイヌリン20gを追加した。不溶性のチコリとダリア由来のイヌリン(平均重合度はそれぞれ33.6と40.3)は急速に糖化、発酵され、生成エタノール濃度は48時間でそれぞれ19.6%(v/v)と19.5%、さらに72時間で20.4%と21.0%に達した。また、エタノール生成速度の最大値はそれぞれ6.2と6.0g/l/h、発酵終了液に残存する全糖量はいずれの場合も0.5%W/V)以下であった。キクイモ乾燥粉末(全糖量77.4%,水分含量3.2%)を基質とした場合、15時間と24時間後にそれぞれ30gと20gのキクイモ乾燥粉末を追加した。生成エタノール濃度は3日間で18.2%(v/v)、さらに5日間で20.1%に達した。また、エタノール生成速度の最大値は6.0g/l/h、発酵終了液に残存する全糖量は2.6%(w/v)であった。
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