研究概要 |
本研究は典型的な出血性蛇毒であるハブ毒に対し抗毒素作用を示すマングース血清中に存在する抗出血因子の構造と機能を遺伝子工学的手法を用いて明らかにするとともに、その大量発現の条件を確立し、ハブ咬症に対する新規治療薬として抗出血因子を活用することを目的としており、本年度の研究において以下の成果が得られた。 1.マングース血清から精製した3種の抗出血因子、AHF1,AHF2およびAFH3の構造をタンパク質化学的に調べた結果、AHF1とAHF2は糖含量において異なっていたが、同一の一次構造を示した。しかし、AHF3は他の二者とは異なっていることがわかった。この結果、マングース血清中には少なくとも二種類の抗出血因子が存在していることが明らかになった。 2.比較的精製の容易なAHF1の全一次構造をタンパク質化学的に検討した。すなわち、AHF1をカルボキシメチル化した後、ブロモシアン、V8プロテアーゼ、リジルエンドペプチダーゼを用いて断片化し、得られたペプチドのアミノ酸配列を決定した。さらにそれらの配列を他のタンパク質の配列と比較した結果、フクロネズミの抗出血因子およびヒトalpha1B-グリコプロテインの構造との間に高い相同性が認められた。しかし、ハブの抗出血因子の構造との間には相同性はなかった。この結果から爬虫類と哺乳類の抗出血因子の起源がことなることが示唆された。 3.本年度の研究で得られた成果に基づいて次年度遂行予定のクローニング実験のためのプローブを合成することができた。 なお、本年度の研究成果は、国際毒素学会の学会誌、Toxiconに投稿中である。
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