研究概要 |
本研究は典型的な出血性蛇毒であるハブ毒に対して抗毒作用を示すマングース血清中に存在する抗出血因子の構造と機能を遺伝子工学的手法を用いて明らかにすると共に、その大量発現の条件を確立し、ハブ咬症に対する新規治療薬として抗出血因子を活用することを目的としており、昨年度までに(1)マングース血清から精製した3種の抗出血因子、AHF1,AHF2およびAHF3の構造を比較し、糖含量、一次構造における相違を明らかにした、(2)AHF1の構造とフクロネズミの抗出血因子およびヒトα1B-グリコプロテインの間に高い相同性をみいだした、などの成果を挙げている。本年度ではAHF1の遺伝子をクローニングする目的で以下の研究を行った。 1.マングースの肝臓からグアニジノチオシアン酸法により全RNAを抽出、精製し、さらにオリゴdTセルロースカラムを用いて総RNAを調製した。この操作を数回繰り返すことにより約10gの肝臓から約20mgのmRNAを得る事ができた。 2.調製したmRNAをドットブロッチングし、さらに、昨年度の研究で得られた一次構造の情報に基づいて作製した2種類のプローブを用いてハイブリダイゼーションすることにより、調製したmRNA標品にAHF1のmRNAが存在することを明らかにした。 3.mRNAと逆転酵素を反応させ、cDNAの合成条件を詳細に検討し、供試mRNAの約30%からcDNAを合成することができた。 以上のように本年度はAHF1の遺伝子のクローニングには至らなかったが、今後の研究の基盤を作ることができた。
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