ペプチド性、特にタンパク質と推定された変異抑制因子の単離と構造決定を目的に、高分子透過性という特性を持つ大腸菌、E.coli MP-1を検定菌に、Streptomyces SP AJ 9455 株の大量培養を行って得られた培養濾液を濃縮し、数段階のカラムクロマトグラフィーを行って予備精製を行った。その後、分取用HPLCを中心に大量分離・精製法の確立を行うことができ、大きな進歩を得ることが出来た。当初、活性物質は分子量7000-10000で通常のアミノ酸以外に未知のアミン物質などの構成成分を含むタンパク質であろうと推定されたが、各種クロマトグラフィーの結果、低分子のペプチドと推定される活性物質を分離することができた。現在までに純粋に得られた活性物質の量はμgオーダーであり構造解析には至っていないが、現時点では、タンパク質との間の弱い結合をした変異抑制因子が、溶媒として用いたHFBAの強い酸性のため結合がはずれて低分子の変異抑制因子を得ることができたものと推定される。活性物質は、アミノ酸分析の結果、少なくとも3つの異常アミノ酸を含み、また、FAB-MSの結果、分子量336であると推定された。しかしながら、得られた量が少なく、機器分析の為にはmgオーダーのサンプルが必要であるので、構造決定と同時に各種バイオアッセイの検討や変異抑制機構の解明を目的に、さらに活性物質の大量精製を行う予定である。今後は、研究室で確立している培養細胞系をも用いて、このタンパク質性変異抑制因子の作用メカニズムを明らかにすることを第二の目的とする。さらに、このタンパク質性変異抑制因子の抗体を作製し、微生物のみならずほ乳動物におけるこうしたタンパク質性変異抑制因子の存在について検索し、細胞の変異やがん化との関連性について明らかにしてゆきたいと考えている。
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