研究概要 |
ペプチド性、特に、タンパク質性変異抑制因子の検索を目的に、高分子透過性という特性を持つ大腸菌の変異株を検定菌としてさらに検索を行い、新しいペプチド・タンパク質性変異抑制因子の検索を進めてきた。本研究では、まず、この因子の単離・精製を行い、構造を明らかにすることを第一の目標とし、300リッターのタンク培養法で得られた放射菌培養液から、大腸菌、Ecoli MP-1による変異抑制活性を指標として分取用HPLCを含めた各種クロマトグラフィーにより大量分離・精製を行った。手段を用いて単離・精製を行ってきた。当初、変異抑制因子の構造は分子量7000-10000のタンパク質と推定されたが、単離・精製の過程でタンパク質とは分離することができ、低分子のペプチド性と推定される変異抑制因子を完全な純品として1.4mg得ることができた。 600MHz-NMRやFAB-MS,FT-IRなどを用いた機器分析の結果、この変異抑制因子は少なくともリジン、オルニチンを含むペプチドで分子量は436と推定されたが、残念ながら最終構造の解明には至っていない。最近、再度の大量培養にも成功し、大量精製も現在最終段階であるので、近くの最終構造の推定が行われるものと期待される。 一方、変異抑制機構の解明には、除去修復欠損株やSOS修復機能欠損株など様々な大腸菌の変異株を用いると共に、研究室で確立している培養細胞系をも用いて、このペプチド性変異抑制因子の作用メカニズムを明らかにし、さらに、このタンパク質性変異抑制因子の抗体を作製し、微生物のみならずほ乳動物におけるこうした変異抑制因子の存在について検索し、細胞の変異やがん化との関連性について明らかにしてゆきたい。
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