本年度の研究計画は、1)モデル化合物テトラナクチンを用いた基本骨格の合成とその特性の調査、2)イオノフォア活性の測定、3)パママイシンよりデザインされた8-epipamamycin carboxylic acidおよびその誘導体の合成を行うことであり、以下順を追ってその成果について報告する。 1)モデル化合物テトラナクチンを用いた基本骨格の合成とその特性調査:市販のポリナクチンを加水分解しノナクチン酸とそのカルボン酸α位の立体配置が反転したノナクチン酸を大量に得ることができた。これらノナクチン酸誘導体を原料とし、光延反応、改良山口法によるマクロラクトン化により、2量体マクロライド9種、3量体マクロライド2種を高収率で合成することに成功した。また、ノナクチン酸への側鎖導入法についても検討を行い位置選択的導入法を確立した。 2)イオノフォア活性の測定:合成した化合物に対しピクリン酸塩を用いた金属イオン抽出実験を行った。その結果、2量体マクロライドではパママイシンの2位が反転した骨格を持つ化合物に弱いながらナトリウム、カリウムを取り込む能力が見られた。また、2種の3量体マクロライドにおいては一方の化合物に全くイオン取り込み能力が見られないのに対し、もう一方の化合物はナトリウム、カリウム、リチウムを取り込むという興味深い結果が得られた。 3)パママイシンよりデザインされた8-epipamamycin carboxylic acidおよびその誘導体の合成 パママイシン類からの化学誘導による側鎖部分へのカルボン酸の導入は、側鎖の三級アミンをホフマン分解により試みたが、その反応の収率が悪く現在検討中である。また上記の結果より我々のデザインした化合物を見直す必要があると考えられた。
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