研究概要 |
パママイシンをモデルとしたカルシウムイオノフォアの創製の第一段階として、その母核である16員環マクロジオライドのイオノフォアの能力を調査した。その結果として、テトラナクチンより得られるヒドロキシカルボン酸を二量化したマクロジオライドがイオノフォアとしての能力を有することを明らかにした。特に金属イオンに対する親和性はリチウムイオンとナトリウムイオンに対して顕著に観察された。更に構造とイオノフォア活性との関係を考察し、金属イオンが配位すると予想されるテトラヒドロフラン環内の酸素原子と隣接するメチル基の相対配置がイオンを取り込むために重要であることを明らかとした。 このマクロジオライド構造が多価イオンを取り込むための基本骨格に十分応用できると考え、またより正確なデータを得るためにも光学活性なヒドロキシカルボン酸が必要と考えられたのでその合成を検討した。この合成は安価に得られるトリエチレングリコールを原料に用い、光学活性体への誘導は立体選択的に導入したトランスオレフィンに対する不斉ジヒドロキシル化反応を用いることとした。この合成法の中には立体選択的なトランスオリフィンを導入する段階が必要でありその合成法も検討した。今回確立した合成法は[2,3]-Wittig反応を利用し,トランスオレフィンだけでなくシスオレフィンの合成も可能とし、さらに得られる化合物として次の反応の足掛かりとなるアリルシランが得られる有用なものである。この方法を用いたノナクチン酸の合成は残り数ステップの段階まで進んでおり近い将来合成が完了する予定である。また、パママイシン類似の構造に必要な側鎖部分の導入法については、モデル化合物を用いて検討し、ボロン試薬を用いるアルドール反応が最も効率の良い方法であることを明らかにした。このアルドール反応の際、得られたボロンエノレートがテトロヒドロフラン環の酸素原子と配位することにより非常に高い面選択性が観察された。今後これらの結果をふまえパママイシン類似のマクロライドを合成し、そのイオノフォアとしての能力について検討する予定である。
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