タンパク質合成とアントシアニン生成 培養開始後に進行する紅心ダイコンのアントシアニン生成がタンパク質のde novo合成を介して発現するのかどうかを阻害剤添加実験で調べた。転写段階を阻害するアクチノマイシンD存在下では、色素生成は抑制されたがPAL活性は逆に増強する意外な結果が得られた。同様の現象がドイツトウヒやエンドウの細胞で観察されており、これらのPALの活性化には転写後調節が重要な役割を果たしている可能性を示唆している。また、シクロヘキシミド添加時にも色素生成は濃度依存的に抑制されたが、PAL活性の低下は見られなかった。 二次電気泳動による特異的タンパク質の検出と色素生成との関連 多くの植物ではPAL活性の誘導とアントシアニン生成とが連動していることが知られている。しかし、前述の結果から、ダイコンにおけるアントシアニン生成では、PAL以外のアントシアニン生成関連酵素の新規合成が重要であることを示すものと思われる。そこで、これらのタンパク質の新規合成を誘導するタンパク質が存在する可能性を経時的に二次電気泳動(一次元目は非平衡pH勾配電気泳動(NEpHGE)、二次元目はSDS-PAGE、検出は銀染色法)で調査した。処理12時間後の色素生成開始直前に一時的に現れるタンパク質や処理後に急速に消失するバンドが見られた。このことから、アントシアニン生成機能を活性化する、あるいはその生成を抑制するタンパク質の存在が期待できることが分かった。今後、このタンパク質のN末端の配列を決定し、DNAレベルでその機能を調べ、アントシアニン生成との関連を明らかにする必要がある。
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