研究概要 |
動物のビタミンB_6の栄養状態を評価するのに最も信頼性があると考えられているのは血液中のB_6誘導体の濃度であるから、血液、特に血球中のB_6濃度を調べることが必要と考え、妊娠、授乳という生理状態にあるラットの血液を用いて分析した。分析の結果、ピリドキサミン5′-リン酸(PMP)の含量が血漿と比較して極めて高いというものであった。そこで、確認のために、ポテト由来の酸性ホスファターゼを用いて、PMPをPMに変換し、ピークの増減から判断しようと、試薬PMPと同時並行的に処理した。試薬PMPは酸性ホスファターゼ処理によりPMに変換したが、血球中のPMPと思われる画分は減少するものの、PMのピークは現れなかった。卵黄もPMP画分が比較的多いサンプルであり、卵黄中に見出されたPMP画分も酸性ホスファターゼ処理で変化するか否かを調べた。そして、卵黄中のPMPと思われる両分では、酵素で処理すると逆に増加する傾向が観察され、それまでHPLC法でPMPと思ってきた両分の再検討を迫られている。そこで、新たにグリオキシル酸による脱アミノ化反応を行いPMP→PLP,PM→PLの反応を行い、さらにKCN処理をして真のPMP量を求めようとした。その結果、赤血球中に見出される、PMP様物質はPMPでなく、妨害物質であることが分かった。同様に、肝臓、脳中のPMP含量はHPLCのピークのそれぞれ80%、40%であると算出した。平成5年度に実施予定の実験項目のうち、処理サンプルの微量化の検討は既に終了した。また、代表的な食品20種類を用いて、実際にB_6誘導体の含量を分析する課題は、HPLC法と微生物によるバイオアッセイ法を併用する方法で,現在進行中であるが、従来PMPと考えていた画分の真の同定ができるまで、HPLC法で求める含量の計算そのものは保留せざるを得ない。従来B_6誘導体をHPLC法で定量する場合、バイオアッセイ法で求めた値とのギャップが問題とされてきたが、その真の原因が解明される可能性がある。
|