前年度までの研究により、ビタミンB_6作用を有する化合物を分別定量するために開発した逆相HPLC法の有用性を確認するためラット、ヒト等の血液中および諸臓器中のビタミンB_6含量を定量してきた。その結果、ビタミンB_6-欠乏食を与えたラットの血液中ではビタミンB_6含量、特にピリドキサール5′ーリン酸(PLP)含量が著しく低下する事実を明確に示すことが出来るようになった。同様に妊娠・授乳中のラットでは血漿中のビタミンB_6のうちPLPの濃度が減少し、ピリドキサール(PL)の濃度が増加傾向を示した。一方、赤血球中においてはビタミンB_6含量が増加し、特にPLPの濃度が増加する事実を、HPLCの分析チャート上で明確に示すことが出来た。しかし、食品中に存在するビタミンB_6含量を定量しようと、本法を用いた場合、妨害物質が多すぎるため定量が不正確になることが分かっていたが、その原因を正確に把握するため、Saccharomyces sereviseaeを用いた微生物定量法を新たに導入し、両者の定量値のずれの原因を解明するため、植物性食品と動物性食品数点を選び、検討した。その結果、酸加水分解後にビタミンB_6総量(PL+PM+PN)として求めた両者の値はどの食品についても比較的良く一致したのに対し、過塩素酸による抽出を行って定量した場合、妨害物質によるピークの関係で定量値に相当のずれが生ずることが判明した。特に、植物性食品の場合に顕著であった。従って、食品のような複雑なマトリックスからなる素材のビタミンB_6含量を定量する場合の抽出法を、再度詳細に検討する必要があることが痛感された。
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