研究概要 |
ビタミンB_6作用を有する化合物を分別定量するために、我々の研究室で開発したイソクラチック逆相HPLC法の有用性を確認するため一連の研究を行った。1)ラットやヒトなどの哺乳動物の栄養状態を判定するために血液・尿中、臓器中に於けるB_6誘導体の濃度を追跡すること。2)食品中に存在するB_6誘導体を個々に定量し、その総和としてB_6量を求め、我々が毎日食べている食事からどの程度のB_6量を摂取しているかを算定すること。これら2つの性質の異なる試料中のB_6含量を求めるのに、単にHPLC法で分析し、その量を算出するのではなく、従来から一般に使用されている微生物定量法を用いて求めた値と比較し、HPLCの信頼性を比較検討することを目的に実験した。 1)の試料の場合、分析すべきB_6誘導体の分子種は2,3種類と少なく、それらの分子種の消長を検出できれば目的を達成したことになる。その点で、興味の対象は捕酵素型であるPLPが、通常生体中に存在する濃度で分析できるか否かが問題となるが、KCN処理をすることで50pmol程度まで分析可能となり、十分実用に供すことができる方法となった。 一方、2)の様な複雑なマトリックス中に存在する多種類のB_6誘導体の濃度を求めるためには、それぞれの分子種の種類と量が問題となる。そこで、微生物定量法を用いて、HPLC法で求めた値との比較を行ったところ、塩酸で加水分解し、B_6誘導体を遊離の形にした後、HPLCに供したときの値と微生物定量法を用いて求めた値とはよく一致していたのに対し、過塩素酸で抽出して、その後、HPLC法で求めた値は微生物定量法を用いて求めた値と比較し低いことが判明した。即ち、過塩素酸抽出法では、完全にB_6誘導体が抽出されていないという結果を得たので、今後試料の前処理法を検討する必要があると痛感した。
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