イネ種子で異種良質蛋白質を発現させるための基礎的データを得るために、本年度は発現の検出が容易な酵素遺伝子を用いてコメアルブミン遺伝子プロモーターとの融合遺伝子を作製し、イネに導入された融合遺伝子の組織および時期特異的発現を調べた。イネゲノムDNAライブラリーよりクローン化したコメアルブミン遺伝子(pRAG1)から制限酵素を用いて様々のサイズ(100、300、400、500、600、1100および1400bp)の遺伝子転写開始点5'上流域DNA断片を切りだし、その下流にレポーター遺伝子としてβ-グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子をつなぎ、コメアルブミン-GUS融合遺伝子を作製した。この遺伝子をハイグロマイシン耐性遺伝子とともに、イネ胚盤カルスより調製したプロトプラストにエレクトロポレーション法により導入した。ハイグロマイシン耐性形質で形質転換カルスを選抜し、増殖したコロニーを細分化培地に移植して植物体を細分化させた。葉から抽出したDNAを用いてサザンブロット解析を行ない、導入遺伝子を持つと考えられる個体を選抜し、さらに栽培を継続した。これらの形質転換イネに実った種子から胚乳を取り出しX-GUSを用いてGUSの活性染色を行った結果、約500bpのプロモーターDNA断片を持つ融合遺伝子を導入したクローン(RA-GUS437)の種子が強く染色された。さらにこのクローンの種子から蛋白質を抽出し、4-メチルウンベフェリルグロクロニドを基質として蛍光法によりGUS活性を測定した結果、いずれの種子においてもGUS遺伝子が発現していることが確認された。また、葉や茎ではGUS活性は検出されず、導入遺伝子の発現は種子特異的であった。これらの結果から、約500bpのコメアルブミン遺伝子5'上流域DNA断片をプロモーターとして他の異種蛋白質もイネ種子で発現させることができると考えられた。
|